
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)
睡眠中の症状ですので、夜間の検査から診断していく必要があります。いびきの音、呼吸による空気の流れ、腹部及び胸郭の動きをモニターしますが、脳波を含めた精密検査は入院施設でしか実施できません。脳波を除いた簡易検査はご自宅で実施可能なので、入院しなくても検査結果を当院で確認し、診断することができます。無呼吸の指数によっては、精密検査を必要とせずに治療を始めることができます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、寝ている間に一時的に呼吸が止まる、または弱くなる状態が繰り返しおこる病気です。一般的は男性に多いとされています(厚生労働省の発表では男女比5:1)。
睡眠中、平均して1時間に5回以上の無呼吸が起こり、それぞれ呼吸停止が10秒以上認められる場合には、この疾患の可能性があります。代表的な症状は“いびき”で、眠りが浅くなるため、日中に強い眠気や倦怠感を生じることがあります。SASは、睡眠の質を低下させ、日中の眠気や集中力の低下を引き起こすだけではありません。
放置すると、血管・心臓・脳に大きな負担がかかり、高血圧症や狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを合併することもあります。できるだけ早く診断し、治療をはじめることが大切です。
原因には鼻から喉頭(のどぼとけ)にかけて狭くなっていること(狭窄)があげられます。狭くなった気道のすき間を空気が通ることで“いびき”が生じます。いびきの要因は、肥満による首や喉(のど)まわりの脂肪沈着、あごが十分発育していない小顎症(しょうがくしょう)、扁桃肥大、舌根(ぜっこん)・口蓋垂(こうがいすい)・軟口蓋(なんこうがい)による狭窄などがあります。
また、加齢や睡眠時における呼吸の調節能力の低下など、機能的な要因も関連します。
女性は男性よりもいびきをかく頻度が低いという報告があります。また、いびきの音量も、男性より小さい傾向があります。これは、女性の方が男性よりも気道の構造が狭いためと考えられているようです。
しかし、女性は加齢とともにいびきをかく人が増加します。なぜなら、女性ホルモンのプロゲステロン分泌が減少すると、気道の筋肉が弛緩しやすくなるからです。そのため、若い女性よりも中高年の女性の方が、いびきをかく頻度が高くなります。
などもいびきを減らす効果があります。
いびきをかくのは男性のイメージが強いため、いびきをかく女性は恥ずかしく、受診につながっていないケースがあると考えられます。しかしいびきは睡眠の質を低下させ、日中の倦怠感や頭痛、集中力の低下などの問題を引き起こす可能性があるため、放置するのは危険です。セルフケアで改善できることもありますが、効果がない場合や悪化する場合は当院にご相談ください。
自宅で装置を装着し、呼吸状態や酸素飽和度をモニタリングします。手軽に始められ、SASの可能性を判定しやすい方法です。
簡易PSGではっきりしない場合に実施します。脳波や呼吸・酸素飽和度などを同時に詳しく測定し、SASの確定診断に用いられます。
治療には対症療法と根治療法があり、症状の程度や原因に応じて選択します。代表的な対症療法には、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)とマウスピース療法があります。当院ではCPAP療法を行っています。
CPAP療法は中等度から重症度に有効な治療法です。睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を開存させて治療します。睡眠中の無呼吸・いびきが減少し、眠気の改善や血圧を下げる効果も期待できます。
睡眠時無呼吸症候群は大きく分けて2種類あります。一つは、呼吸運動は保たれているものの、上気道のどこかの閉塞によって、鼻・口の気流が停止する閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)です。もう一つは呼吸運動そのものが停止する中枢性睡眠時無呼吸(CSA)です。OSASは世界的にも有病率が高く、様々な循環器疾患と関連することがわかっています。CSAが心配な場合では当院で頭部MRI検査を実施することもできます。
OSASは、高血圧の原因になる可能性があります。OSASの約半数の患者様に高血圧が認められ、高血圧患者さんの3割にOSASが認められるという報告もあります。また、薬物治療に抵抗性のある高血圧症に、OSASが隠れている場合があります。
閉塞性は心臓に負担がかかり、心機能を低下させる可能性があります。心不全患者さんにOSASが合併しやすいことや、OSAS合併している心不全患者さんでは、それを治療しない場合死亡率が格段に高まるという報告もあります。
OSASは脳卒中の発症リスクが高まるとされています。とくに50歳以上では、脳卒中および死亡リスクが閉塞性でない方の約2倍という報告もあります。
OSASは不整脈を合併することが多く、無呼吸の増加や低酸素血症の悪化に伴い、合併頻度も高まります。とくに夜間の不整脈は、半数近くのOSASの患者様に認められ、重症度では、その発症リスクが2〜4倍に高まるとされています。
冠動脈疾患を有する方がOSAS合併する率は、冠動脈疾患のない方の約2倍といわれています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療期間は、選択する治療法や個々の症状の重症度によって異なります。また、SASは慢性的な病気であるため、継続的な管理が必要な場合が多いです。治療期間としては、開始から数日~1週間で日中の眠気や疲労感が改善するケースが多いです。怠感、パフォーマンスの低下などを問診していきます。
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問診
患者様から問診を伺い睡眠時無呼吸の可能性があるか判断いたします。
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検査
睡眠中の呼吸状態をモニタリングするため、自宅で1晩か2晩で行う簡易PSG検査を行います。必要に応じてさらに精密なPSG確定検査を受けることになります。
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確定検査・精密検査
簡易検査や精密検査を終えた後、検査結果が出るまでは概ね1-2週間程度かかります。検査の結果、治療が必要と判断された場合はその程度や症状に応じて、それぞれの状態に見合った診療スケジュールを作成します。
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精密検査の結果、SASと診断され治療が必要と判断された場合は治療を始めます。
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治療
それぞれの症状や程度によって最適な治療方法を選択していきます。また、SASは長く付き合っていく必要がある病気であるため、治療の意義や必要性を十分理解し、具体的な治療法として、減量やマウスピース、CPAP療法など行っていきます。外来には月1回通院をしていただきます。