
尿検査は、採取する際に患者さんの負担が少ないけれど、実は体からの様々な情報を提供してくれています。
そして、子供たちの学校検診真っ最中の今の時期が1年のうちで一番「尿検査」が注目される時期でもあります。
尿検査で真っ先にチェックする代表的な項目は「蛋白、糖、潜血」です。いずれかの項目がもし陽性になってしまった場合、再検査を行います。
今回はその中で、「尿潜血」についてお話します。健診で指摘される尿潜血の多くは、顕微鏡的血尿といって見た目は普通なのに、顕微鏡でみると赤血球が混じっている場合です。ぱっと見はわからず検診などで偶然指摘されることが多いです。
腎臓内科医としては、大人と子供では少々考える病気が変わってきますので、今回は小児についてお話しします。
腎臓を含む尿路と呼ばれる尿の通り道のどの部位の異常も血尿の原因となりますが、実は、血尿だけが陽性の場合、「無症候性血尿」といって何もないのに血尿があるというケースが最も多いです。しかし、その一方で慢性腎炎の早期発見につながっているというのも事実です。
また、遺伝的に腎臓の血管の基底膜が薄い「薄層基底膜病」というものもありますが、あまり治療の必要はありません。
そして、「ナットクラッカー症候群・ナットクラッカー現象」という場合があります。
これは、「左腎静脈が腹部大動脈と上腸間膜動脈に挟まれることによって、血流が滞り、血尿を引き起こす状態」です。簡単に言うと「尿の通り道が血管に挟まれちゃって、おしっこに血液が混じってしまった」ということです。ナットクラッカー症候群では腹痛や血尿がひどい場合を除き、ほとんどが経過観察で大丈夫です。痩せた女性に多く、成長に伴って脂肪がついてくると改善してしまう場合があります。
当院では健診で尿潜血を指摘されたお子さんに、慢性腎炎に対する精査はもちろんのこと、腹部超音波検査も実施し「ナットクラッカー症候群の有無」をチェックしています。
ご心配な場合にはどうぞご相談ください。